日本最古の血統を津山で守り伝える。
末澤 雅彦・未央さん【前居住地/出身地】北海道弟子屈町 【現住所】岡山県津山市 【職業】畜産業
【前居住地】北海道弟子屈町
【現住所】岡山県津山市
【職業】畜産業
津山市への移住
雅彦さん:現在私たち夫婦が営む「さくら牧場」では、和牛の繁殖を行う他、地域の肥育農家や精肉店と連携し、生産から販売までを一貫して取り組んでいます。北海道で生まれ育ち、移住前は道東の原始の自然をテーマにした写真家として活動していました。
妻の実家である津山に移住し、牧場を始めてからは、「北海道でも牛を飼っていたのか」とよく聞かれますが、実は全くそんなことありません(笑)。ごく普通のサラリーマン家庭で育ちました。
津山に移住した当初は運送会社に勤めていました。そこで牛や家畜の餌を取り扱っていたんです。運搬でいろいろな農家さんを回る中でよく耳にしたのが、「実は黒毛和牛の始まりは岡山なんだよ」という話でした。
未央さん:津山には食肉文化がありますが、津山で生まれ育った私自身はあまり意識したことがありませんでした。岡山といえばフルーツ王国のイメージ。その和牛の話を調べてみると、そんなルーツがあったのかと、地元ながら新たな発見でした。
雅彦さん:ただ岡山の原産牛は、品種改良による大型化やサシを入れるなどの世の流れについて行けず、淘汰されていったと聞きました。なんでも失うのは簡単ですが、復活させるのは難しい。特に北海道ではそういったことが、人間の都合でたくさん起きています。
岡山の原産牛が始まりの牛であるなら、誰もが認めるような素質がきっとあるはず。そう感じた私たちは、絶やさず守っていかなければいけないと率直に思いました。
本気で農業に向き合うようになった出来事
雅彦さん:牛に興味を持った私は、まず子牛を飼うことから始めました。「さくら」と名付けた子牛を私たちはとても可愛がり、人工哺育(母子を分離して育てる方法)で育てていました。一緒に散歩なんかもしていましたね。
ただ他の畜産農家の方からは、「そういう飼育の仕方は良くない」と言われていました。今では忠告の意味が痛いほどよくわかります。散歩中に口にしたあぜ草の除草剤が原因で、「さくら」を亡くしてしまいました。
未央さん:当時の私たちはペットと経済動物の違いすらも、よく理解していなかったんですね。
雅彦さん:本当にそうです。ただ仮に「さくら」を亡くさずに済んでいたとしても、その延長線上で人がその肉を口にしたらと考えると、牛の餌とはいえ粗末にはできないですよね。「さくら」のことを忘れないようにという想いで、「さくら牧場」という屋号にしました。現在、「さくら牧場」では9割が自給飼料で、徹底管理している餌しか牛には食べさせていません。ゴールはないので、求める水準は常に高く持とうと考えており、食品衛生管理の世界基準でもあるHACCP(ハサップ)を取得しています。また私自身もHACCPの指導員の資格を持っています。牛が飲む水も人間と同じようなレベルにするなど、そこまでやるかと思われるかもしれませんが、牛が病気になる要因を徹底的に取り除こうと、様々な取り組みをしています。
岡山の原産牛「竹の谷蔓(つる)」を復活させたい
雅彦さん:「さくら」の死をきっかけに飼育方法を見直した私たちは、津山市より西の新見市に、黒毛和牛のルーツである岡山の原産牛「竹の谷蔓(つる)」の血を守っている方がいると聞き、門を叩きました。私たちが「竹の谷蔓」のことを知った時には、すでに日本で十数頭しかいない状態でした。
私たちはその農家の方から2頭譲り受けて、念願だった「竹の谷蔓」の飼育をスタートさせました。
未央さん:「竹の谷蔓」は、「サシが入らない」「大きくならない」というこの二つの思い込みに縛られ、数を減らしてきました。
雅彦さん:「『竹の谷蔓』は美味しくない」と思われてきましたが、実際に食べてみると、すごく美味しかったんです。自分たちの舌を信じて、広く多くの人に食べていただいたら、世の中の反応は早かったですね。和・洋・中と様々なお店から「ぜひ肉を使わせてくれ」と、これまでの評判が嘘のように問い合わせがきました。
その後、農林水産省の分科会でも「竹の谷蔓」を食べていただいたことで、私たちの取り組みが話題になりました。たくさんのメディアでも取り上げていただき、本当にここまでやってきてよかったなと思いました。
これまで、自分たちがやっていることが本当に正しいのかという疑問を一つ一つ消していく作業の連続でした。疑問が今、ようやく確証に繋がってきました。今は胸を張って「竹の谷蔓」は自慢の牛であると言えます。
これからについて
雅彦さん:お肉を売って完結ではなくて、どうすれば最も美味しい状態で提供できるかを考え、お肉ソムリエの資格を取得しました。自分で美味しい食べ方や焼き方まで教えてあげられますからね。
HACCP的にも「川上から川下まで管理しましょう」という考え方が原則です。牛が食べるものから安心安全なものを、その肉を人が口にしても安全安心でいられるように、常に意識しています。
日本中に知れわたる肉を岡山で作れたらいいなと思います。
未央さん:私は地域の子どもたちが見て誇りに思ってくれるような取り組みをしていきたいと思います。小学校が地域学習に畜産を取り入れることも考えてくれているみたいです。この前は子供と味噌作りを体験しましたが、昔からの技術を学んで受け継いでいくことも、また大切だなと思いました。
移住を考えている方へメッセージ
雅彦さん:移住してきた人ほど、土地の良いところを客観的に見ることができるんじゃないかなと思います。そこに、自分の考えや想いをプラスして、より良くしていく。
未央さん:面白いことを考える人は、やはり色々知っている人、広く見聞のある人が多いと感じます。私もいつか地元に帰らなきゃという中でいろいろ見てきました。
子供にも行きたければ海外でもどこへでも行っていいよと言っています。性格にもよりますが、きちっと計画するより、大体の方向だけ決めてその時の出会いに任せた方が、気が楽でいいこともあると思います。
雅彦さん:いろいろな考えのひとたちが混ざり合って、この地域をより楽しくしていければと思います。
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